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高齢者虐待防止のための養護者支援について
~虐待対応から「男性介護者の集い」立ち上げの提言とその効果の分析~

吉田隆宏氏 広島市城山・五日市観音地域包括支援センター

 

研究目的

高齢者虐待防止法第6条の養護者に対する相談、指導及び助言の支援について、平成22年度から区内6つの地域包括支援センター内の社会福祉士と行政担当者が高齢者虐待について事例検討を重ねました。

「男性介護者の集い」という社会資源開発を行なった過程とその効果について、ソーシャルワークの視点から検討していきました。

結果

平成22年度
吉田氏は行政に働きかけて、個別支援のための虐待と思われる事例の検討会を行ないました。
夫婦や親子の老老介護の家族の孤立状況や、男性介護者が虐待に陥りやすい状況にあることに対して、社会的に支援の必要性を複数把握して集いの政策提言を行ないました。

広島市の「養護者による高齢者虐待の現状(平成23年度)」
被虐待者 女性が82%
虐待者 男性介護者60%
息子41% 夫19%

平成23年11月

行政と包括が主催して「第1回男性介護者の集い」を実施しました。
男性介護者が8名参加しています。

男性介護者の「妻を介護する意義」は「今まで苦労かけたことのお返し」と述べていまして、「夫婦愛・家族愛」がみられております。

集いの話し合いから、さらに要望がありまして、平成24年4月から定期開催となりました。

平成24年5月

行政が区内居宅介護支援事業所32カ所に「区内男性介護者把握のためのアンケート」を実施した結果、当事者同士の話し合いの場のニーズを把握しました。
介護支援専門員からは
「男性が確実に増加している」
「介護方法にこだわりが強い」
「弱音を吐けない人が多い」
「地域との交流を拒む人が多い」
との回答があり、男性介護者の介護に頑張ってはいるが、社会的には孤立しており、集いのニーズを持つ人が多いということが把握できました。

ケアマネさんもどうしていいか分からないといった意見もあり、苦労している様子がうかがえます。

 

各年度の集いの参加実績をみますと
実人数 32~18人
1回平均 6.1~8.4人
地域の男性介護者の支援の、社会資源の一つとなっていることがわかります。

集いでの養護者同士の情報交換から、
社会的な孤立という環境・状況が虐待を助長させていることが分かり、当事者同士が価値を受容、共感することで課題解決ができ、高齢者虐待の抑制につながっていると思われます。

平成29年4月以降

当事者同士が情報共有し、共鳴し合うと、介護者から「自分たちで運営したい」という意見が出て、主体的に会の自主運営の方向付けができました。

また、同時期に市内他地区で同様の集いが3カ所誕生し、それがしないのネットワークを作り、大きな支援体制に展開して自主運営となりました。

その中にはOBもいたりします。
新規の参加者をお誘いするときには、当事者やOBを連れていきます。

妻が認知症になったとき、「治るのではないかと期待してしまった」と離すOBの話は響きました。

 

考察

事例検討や集いを通して、男性介護者の介護の価値が「夫婦愛・家族愛」が共通の土台であることがわかりました。
養護者支援では、価値を尊重した虐待予防支援が重要であります。

集いでの養護者同士の情報交換から、男性介護者は「社会的孤立という環境・状況」が虐待を助長させていることが分かりました。
その環境・状況の改善は、当事者同士の価値の受容・共感が心理的孤立問題の解決、高齢者虐待の予防につながっており、更には集いの自主運営に発展しています。

支援実践過程では、社会福祉支援技術の一連の支援経過をたどり、利用者と社会福祉士の協働作業で行なって、支援対象はミクロレベルの個人に始まり、マクロレベルの地方自治体に働きかけて、メゾレベルの地域社会に社会資源を開発したことが分かります。
(予防的社会福祉)

結論

今回の分析では、価値・知識・技術の創造的混合物であるソーシャルワークの枠組みから支援実践を見直してみると、単なるケースマネジメントとは違う、幅のあるソーシャルワークを行なったことがわかりました。

 

感想

いまでは全国各地で行なわれている「男性介護者の集い」

社会で孤立気味で、一生懸命なところが自分を追い詰めて虐待に至ってしまう男性介護者。

相談支援の最前線にいる包括の社会福祉士から、行政に働きかけて、それが自主運営にまでいたった報告はとても素晴らしいと思いました。

社会資源は、現場が必要性を感じ、それを行政に訴えてつくっていく。そういったプロセスが示されている発表でした。

 

 

研修時に泊まった「西の雅 常磐」
名物の「女将劇場」
まだまだお元気です!