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刑事司法領域におけるソーシャルワーク社会福祉士への期待と課題
水藤昌彦氏

今回のお話は、刑事司法と社会福祉の関係についてですが、前提条件として、犯罪加害者に対しての社会福祉という観点からお話をします。
(もちろん犯罪被害者と社会福祉も重要ですが、今回はそれについては述べません)

刑事司法と社会福祉の関係

社会福祉事業法という法律がありますが、更生保護事業は社会福祉事業に含めないとして、社会福祉においては更生保護は分離されてきました。

司法機関は福祉的機能を司法福祉としており、司法の中に福祉的機能が内包されていると考えます。

刑事司法領域におけるソーシャルワーク、つまり司法と福祉の連携関係は、それぞれの一部分が重なるイメージです。

2000年代半ばに司法と福祉の連携が必要とされてきましたが、それぞれの価値感、理念、機能について大きな違いがありました。

司法と福祉のアイデンティティの隔たりとして、行動様式は司法はパターナリズム、福祉はインフォームドコンセント。

決定方式は、司法が指示・命令、福祉は自己決定。

司法は社会の安定と過去の責任を求めていく。福祉は個人の成長と将来を求めていく。

しかし、実際は司法と福祉にそんな隔たりは存在しているのでしょうか?

刑事司法と福祉の連携による対応・支援の展開

2000年代は刑が確定後、出所後に支援をする、いわゆる出口支援を行っていました。

それから、刑務所へ社会福祉士を配置したり、地域生活定着センターを設置。

2010年代から、被疑者・被告人段階での介入と支援。

今では、事件化するまえに関わっている。入口支援も行うようになっています。

再犯防止推進法という法律があるように、再犯を防止するために司法と福祉が連携するようになっています。

 

犯罪行為者とのソーシャルワークにおける理念

高齢者で万引きをする人はかなりいます。
刑務所に入ったりしています。

それは多様で複雑化した生活上のニーズを持つ人への支援ができていないことになります。

生活困窮者は目に見えないところにいます。

犯罪をすると「犯罪者」としてラベリングされ、社会から排除される。社会的な孤立を生んでいく。

それに対して、個人と環境の相互作用へ着目し、ソーシャルサポートの視点により支援する。そのような生活モデルが築けるようにしていくことが必要です。

アイデンティティ転換の過程として
衣食住の保証があって、エンパワーされる関係、そこから新しいスキルを得て再文脈化される。
再文脈化とは
①新たな人生の語り
②自分自身の「再定義」
③自身の経験の再構築

刑事司法では「指導」という言葉が使われますが、福祉の視点では「指導」ではない価値観、多面的なニーズから対象者を理解し介入することをしていきます。
若い弁護士は「リーガル・ソーシャルワーク」として実践している人もいます。

本人がよりよく生きる権利保障としての福祉による支援、また多様で複雑化した生活上のニーズをもつ人への支援の結果、反射的効果として「再犯防止」がなされる。
指導ではなく、生活が安定することで犯罪を犯さなくてよくなる。といった考え方になります。

 

社会福祉士への期待と課題

社会福祉士の方には、
①アセスメント
②プランニング
③社会資源
④コミュニケーション
を丁寧にやっていただき、生物・心理・社会の各領域にわたる多面的な対象者理解、そして地域社会への働きかける力、本人との意思疎通を実践していっていただきたい。

課題として、刑事司法領域で活動するための専門的訓練が必要と考えます。
①制度・手続き
②価値・文化
③拘禁体験の理解
④リスク対応
それについての学びと実践をしていってほしい。

また、福祉の「司法化」をいかに回避するか?
福祉による支援は、再犯防止のためにするのではない。福祉の支援で生活が安定し、その結果再犯防止につながっていく視点をもってもらいたいと思います。

 

発表を聴いて

昨年の大会でも、刑事司法分野の話を聴きました。
高齢者分野とはかけ離れていると思いましたが、今回のお話で社会福祉士としての考え方が確認できました。

罰則や厳しい指導で世の中の秩序を保つのではなく、一人一人の生活を安定させ、結果世の中の犯罪が減っていく。生活困窮者のニーズに丁寧に応えていき、生活を再構築していく。

これからも格差社会がますます進んでいく危険性があります。
それに対して、社会福祉士として目の前のことを丁寧にやっていくことが必要なんだなと感じました。

 

「西の雅 常磐」に宿泊しました。
写真は部屋からの風景。梅雨明け前でどんより曇っていました。